vol.1 堀田力さん
  vol.2 吉行和子さん
まだ空気の冷たい立春の都内某所。『折り梅』主演の吉行和子さんが、毎日映画コンクールで田中絹代賞の栄誉に輝いたというこの春一番、嬉しいニュースが舞い込んできました。吉行さんは松井監督と久々の再会でしたが、とてもリラックスしてお話をうかがうことが出来ました。

松井:まずは田中絹代賞受賞おめでとうございます。

吉行:どうもありがとうございます。賞を頂けるなんて思ってもなかったので、ほんとにびっくりしました。

松井:毎日映画コンクールでの賞は、実に42年ぶりだそうですね。

吉行:そうなの。はじめて映画に出た「にあんちゃん」のとき以来ね。

松井:小学生の時、拝見しました。

吉行:またそれを言う!(怒)

松井:(笑)でも、こんな風に吉行さんと冗談言い合えるようになったのも、最近ですね。撮影中はほとんど、私語らしきもの交わしませんでした。お互いに緊張感いっぱいで

吉行:そうでしたね。私そういうの好きですから。

   

松井:はじめてお会いした時から、静かな気迫が漲っていらっしゃいました。マネージャーさんから、髪を白髪にしたりしないでくださいね、と言われてたのに、衣裳あわせの時に、「髪も切ります。白髪もします。」とおっしゃって。

吉行:私はこれまでずっと髪を長くしてましたし、長い髪が好きでした。長い髪の方が自分らしい気がして結構こだわっていたのです。だけど、それはやっぱりみみっちいことのような気がして。これをきっかけに、まず髪を切って、そうすれば気分も変わるし、と思って切ったんです。その後はもう、「髪の長い自分」みたいなのにこだわるのはやめようと思って。だから今はもう短くしたまんまです。

松井:そのように何か、飛べるっていうのかな。それは、映画だから出来るっていうのがあるのですか?

 
   

吉行:そうですね。私にとって実生活っていうのは、二の次三の次なんですね。やっぱり仕事やってる時が一番充実感があるというか、一番正直な気持ちでいられるって思うんですよ。ほんとにここ最近、そう実感するんです。

松井:それはいつぐらいから実感されるようになったのかしら?

吉行:やっぱり40も過ぎて、50にも近くなってからですけどね。まあ、そういういい仕事にも巡り会えて、巡り会った時って充実感がとても強いし。それに比べたらやっぱり実生活は、ある意味じゃどうでもいいと感じてしまうんです。今後ますますそうなる気がする。だから私にとっては、熱中できる仕事を頂けるということが一番の幸せなのね。

松井:でも実生活とか実人生、ご自身の人生そのものも。演技をされる上で、今までの体験が肥やしになってきたことも、たくさんお有りですよね?

吉行:そうですね。ほんといろんなことがありましたし、だてに年はとってないわよ(笑)って、若いディレクターさんに言ったことがあるんですね。現場で戦争の話になったりして、やっぱりそういう話の時は「伊達に年取ってないんだ」って、いばったりしてるんですけど(笑)。戦争も知ってるし、戦後も知ってるし、これまでの人生を振り返ると良かった事って言うのは、ほんのちょっとしかないんですよ。でも、それはみんな役に立ってるから、結局自分にとっては良かった事になってるのかな、と思いますね。

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