私が松井久子監督に初めてお会いしたのは前作「ユキエ」の上映会でした。既存の映画館ではなく全国600の自治体で福祉関係者や女性達が応援する上映会の一つとして犬山市へ来られたものでした。「ユキエ」をアメリカで製作した意図や過程やらを監督から聞くうちに、私はすっかり映画というものの持つ力と松井久子監督の世界に魅せられてしまいました。
松井久子さんの二作目が、愛知県豊明市の主婦小菅もと子さんによるドキュメント「忘れてもしあわせ」であり、その撮影が愛知県で行われると知った時は大きな喜びでした。と言うのも原作者の実母はわが犬山にお住いですし、この物語の中には家族が犬山で過ごす場面
も出てくるからです。
映画の題名は「折り梅」に決まりました。早速、商工会議所会頭をお勤めになった高橋隆治さんを会長に「折り梅応援団」が発足、犬山でのロケのお手伝いをすることになりました。
撮影隊が犬山へ入り、市内のあちこちでは身近に映画づくりに触れる興奮みたいなものが生じました。クランクアップまでの期間中、応援した多くの市民の皆さんは、それぞれに"夢"を持って、楽しく新鮮な経験をしたのではないでしょうか。まさしく映画「折り梅」を作る過程は、みんなが一つの夢を追っかける行為でした。
この映画の主人公達は、老令、病気、仕事、もろもろの人間関係・・・・われわれの身近に起る現実のトラブルに悩み、苦しみつつ家族の絆をたしかめあいながら、力強くそれを克服していく。『苦悩を突き抜け歓喜に至れ!』というベートーベン第九交響曲の言葉が浮かびます。
「折り梅」には前作「ユキエ」同様、松井久子監督の持つヒューマニズムが底流にあり、強く生き抜くことへのまっとうな愛の力に、胸が熱くなりました。
|