名古屋郊外のベッドタウン・愛知県豊明市。サラリーマンの夫・菅野裕三とパート勤めの主婦・巴、生意気になり始めた中学生のみずほと、育ち盛りの小学生・俊介の4人家族に、裕三の母・政子が同居することになった。

 ところが同居して間もなく、政子が変調をきたし始める。雑巾を縫っては、それを忘れてしまい、毎朝、巴に雑巾を何枚も渡す。ゴミ袋の集積所を見分けられず、他家の玄関先に置く。かと思うと、突然、激しい感情に見舞われ、巴が政子のために作ったお弁当を床にぶちまける。 この急激な変貌に、周囲は戸惑い、苛立ち、家族の団欒はあっけなく崩れていく。
思いあまった巴は、嫌がる政子を無理矢理、病院に連れていき、そこで義母がアルツハイマー型痴呆症に冒されていることを知る。


 どうしてもパートを続けたい巴は、ヘルパーを雇い、この事態を乗り切ろうとしたが、ことはそう簡単にいかない。裕三も理解がなく、夫婦の仲もぎくしゃくして、口を開けば言い争いだ。

 しかし、誰よりも傷つき、苦しんでいたのは、政子自身だった。痴呆という先の見えないトンネルに迷い込み、自分を見失うのではないかという漠然とした恐怖や、やり場のない苛立ちを、彼女は巴にぶつけていたのだった…。

 そんなある日、政子が突然いなくなる。巴は思い当たる場所を探し回った。降り出した雨が容赦なく彼女を濡らし、ようやく港で政子を発見したものの、巴は心身共に消耗しきって、寝込んでしまうのだった。「このままでは、家族が崩壊してしまう」。思いあぐねた裕三と巴は、政子を同じような症状のお年寄りが暮らすグループホームに入れることを、決意する。

 入所前夜、巴は政子の部屋で寝ることにした。そんな巴に、政子は青春時代の思い出を楽しそうに語る。そして、同じ布団で寝たいと言うと、子供のように巴に抱きつき、安心しきって眠ってしまった。日毎に子供の頃の<記憶の世界>に帰って行くばかりの政子…。


 翌日、ホームに向う途中、巴は政子から、女手ひとつで4人の子供を育てた半生を聞かされる。幼い頃の母との別 れ、義父の暴力、夫の死。政子は母が自分に聞かせたことを遠い目をして語る。「梅は枝を折って活けても、皮から養分を吸って咲き続けるから<折り梅>と言うんだよ」


 巴は初めて義母を、ひとりの女性としてみつめなおした。たとえ痴呆に冒されても、人が人でなくなるわけではない。これまで自分は、政子を厄介者のように扱ってきたのではないだろうか。「もう一度やってみよう、おばあちゃんのあるがままを受け止めよう」。政子を叱らず、ゆったりと受け入れて相手をする巴を見て、裕三も何かと手助けをするようになった。

 政子もすっかり落ち着いてきた。子どもたちも、大好きなおばあちゃんとの友好的な関係を築いてゆく。 一家にようやく笑顔が戻ってきた。そしてそれは、初めて本当の愛情と優しさで結ばれた、強固な家族の絆だった。


 やがて、政子は今まで眠っていた素晴らしい才能を見せ始める。それは、絵を描くことだった。ようやく安らぎを見出した心により、秘められた才能の扉が開いたのだ。自信を与えられたからだろうか、政子の才能はいっそう磨かれていった。
そして、ある日、それまでの一家の苦しみと努力がすべて報われるような素晴らしい出来事が起こる!!